『手の届くところ』 --------------------------------- 亜由美はぼんやりした顔で、学校の廊下をのたのたと歩いていた。 時折あくびをし、目をこする。 すれ違う男子生徒が、そんな彼女をちらちら見ている。 亜由美は本来は可愛らしい子だ。 だが彼女は以前、容姿で目立ったのはいいが、結果的に嫌な思いをした事が何度かあった。 その経験から基本的な行動指針が「とにかく目立たない事」になっている。 それで、制服はともかくとして、メガネは極力ださいデザインを選び、常時うつむき加減で、地味にこそこそ行動をする。 そのおかげというべきか、普段は可愛いという評価は受けていない。 その意味では、今の彼女はいささか迂闊だった。 制服はいつもどおりだが、伊達めがねをしていないし、うつむいてもいない。 気だるそうにあくびする姿は、こんな可愛い子、いたっけ? と男子生徒に思わせるに充分だった。 別に亜由美に心境の変化があった訳ではない。ぶっちゃけて言えば、単なる寝不足のせいだ。 お気に入りのテレビドラマのせいで、睡眠時間が圧倒的に足りていない。 それはドラマが深夜番組だから、などという単純な理由からではなかった。 彼女がはまった番組は、『科学捜査官8823』だ。 世間的には秘密の、警察8番目の部署に属する正体が謎の主人公が、様々な科学的捜査を駆使して謎の事件や完全犯罪に挑み、隠された秘密を暴いていくのだ。 そのドラマは世間一般でも好評で、今放送しているのは既にシーズン3だった。 最近このドラマにはまった亜由美は、見逃していたシーズン1と2を見たかったが、中学生の経済力では、ほいほい映像ソフトを買えはしない。 それでも金額的に絶対無理でもないので、他の出費を切り詰めて、どうにか中古で買ってしまおうかと、少し前まで絶賛お悩み中だった。 そこに、降って湧いたような幸運が訪れる。 亜由美の家が契約しているケーブルテレビで、『科学捜査官8823』のシーズン1と2が一挙に再放送されたのだ。 と言っても、彼女がそれを単純にテレビで見られるかというと、話はそう簡単ではなかった。 まず、再放送される時刻はかなり深夜だ。 そして毎日、ある程度まとめて放送するので、そのままだと何時間もテレビの前に釘付けにされてしまう。 その時点でもう色々駄目だが、最大の問題は、ケーブルテレビのチューナーが、父親の書斎にある事だった。 実は、彼女の父親はこのドラマが好きではない。 以前、居間で見ていたら、黙ってチャンネルを変えられた事がある。 抗議したが無駄だった。こんな物見るな、で一蹴されてしまった。 幸い番組自体はレコーダーでも録画していたので、あとでこっそり見直している。 それ以後、彼女はリアルタイムでドラマを見るのをあきらめ、父親の来そうにない時刻に録画をこっそり見ていた。 父親の書斎は立ち入り禁止ではない。 また、ケーブルテレビのチューナーには、実は録画機能が付いていた。 だから彼女は父親の留守中に書斎に入り、留守番録画を設定しておいた。 父親はこのチューナーをまるで活用していない。たまに番組を流し見る程度だ。留守番録画の機能など、ある事すら知らない。 おかげで亜由美は、シーズン1と2全話の録画自体には成功した。 問題は、それを見る方法だ。 書斎で見るのは危険だ。もし見つかれば、録画に気づかれて丸ごと消されかねない。 そのチューナーは他のメディアへの書き出しに対応しておらず、だから録画の持ち出しもできない。 だが彼女はあきらめずに調べ、解決策を見出した。 チューナーは、何とかいう名前の映像伝送規格に対応していた。 同系統の規格に対応した再生機器を使えば、同じローカルネットワーク内でなら録画を視聴できる。 そして、パソコンに対応ソフトを入れれば、それでも代用できる様なのだ。 彼女は以前、勉強にも使えるからという名目で、結構上等なノートパソコンを買ってもらっていた。 もちろんそれは勉強にちゃんと使っているし、パソコン自体の学習もしている。 つまり、買ってもらった名目にはきちんと応えていた。義務があるとしたら、それは十分に果たしている。 だから一昨日、そのノートパソコンに例の対応ソフトを入れてみた。 設定にかなり苦労したが、結論から言うと、亜由美は見事にチューナーに録画されていたドラマの視聴に成功した。 誤算は、まず一話だけ見るつもりだったのに、面白くてつい、あと一話、もう一話・・・と、明け方までずるずる見続けてしまった事だ。 おかげで昨日は一日中眠かった。昨夜こそは、一話見たらそれで止めておくつもりだった。 「ふあぁ・・・あ」 またあくびが出る。結局、昨夜もずっと、朝になるまで見続けてしまった。 二晩連続の徹夜となると、いくら若い亜由美でも、かなりきつい。 あまりの眠さに亜由美も反省し、決意する。 あうう・・・眠いよぉ。 シーズン1、まだ全部見終わっていないけど、今晩は見るの、やめとこっと。 一話だけなんて言って見始めても、また続けて見ちゃいそうだもん。 大丈夫、パパは録画に気づいてない。そんなに焦って見なくても、消されたりしないから。 だから、今晩はちゃんと寝よっと。 なお今は昼休みだ。 本来なら彼女は教室で仮眠でもしたかったが、忘れ物をしている事に気づいてしまった。 メガネがないのだ。でも、どこにあるかの見当は付いている。 3時間目の体育で、倉庫にマットを取りに行った時に、そこで外したまま置いてきてしまったらしい。 眠くてうっかりしていた。メガネさえ忘れてなければ、ちょっとは昼寝できたはずだった。 ほんとに、今晩はちゃんと寝なきゃ。 そうすればもう、忘れ物なんかしないで、ちゃんと昼寝できるよね。 などと決意を新たにするが、論理が明らかにおかしくて、しかも自分でそれに気づいていない。 眠気は論理的思考の敵と言える。 体育館の横に建てられている、結構大きな体育倉庫の中で、亜由美は途方に暮れていた。 メガネが見つからないのだ。 「あれえ、どこかなあ?」 まず棚を見た後、マットの横や跳び箱も調べたが、ない。 半ば無意識にひょいっと置いたのだろうか、正確な場所を思い出せない。 倉庫の奥の方まで行ってみたが、そこにもない。 「・・・ここじゃなかったっけ?」 ふと思い出す。体育の授業が始まった時点で、メガネをどこかに置いてきた気がする。 でも本当に? どうも、記憶があやふやだ。 亜由美は、ぺたんと座り込み、跳び箱に寄りかかった。 冷静に考えよう。本当はどうだったのか、思い出さなきゃ。えーとね。 えーと、えーと、えーとねぇ・・・・・・ ・・・・・・くー。 数分後、跳び箱に寄りかかったまま、眠りこけている亜由美の姿があった。 めでたしめでたし。 ・・・・・・いやいやいや、まだ終わりじゃないから。もうちょっとだけ続くんじゃ。 * * * 亜由美は、ふっと目を覚ました。 ここはどこ? 一瞬状況が判らないが、やがて、じわじわと思い出してくる。 あのまま寝ちゃったんだ。いま何時? と腕時計を見る。 「あちゃあ」 夕方を過ぎ、そろそろ夜といっていい。午後の授業を完全にすっぽかしてしまった。 これから帰宅となると、門限も越える。父親と鉢合わせしたら、きっちり怒られてしまう時刻だ。 とは言っても自分が悪いので仕方が無い。あきらめて、素直に怒られよう。 そしてこれ以上遅くなる訳にもいかない。メガネはいったんあきらめ、帰る事にする。 どうせ伊達メガネだ。無しでも生活に支障がある訳ではない。 座り込んでいた体勢から起き上がろうとした。 おしりが冷えてしまっている。背中もちょっと痛い。 「あたたたた・・・・・・ん?」 彼女の背後、つまり跳び箱の向こうから話し声が聞こえた。 この声がしたから、彼女は目を覚ましたのだろうか? そういえば体育倉庫の中が、ほんのり明るい。窓の外はもう暗いのに。 壁の明かりが点けられている。ならば自分以外の誰かがいるのは確実だ。 亜由美が倉庫内を探した時は、まだ窓から入る光で十分明るかったから、照明はつけなかったはずだ。 特に警戒することもなく、亜由美はそのまま立ち上がり、声のするあたりを見た。 10人程度の男たちがいた。倉庫の奥に唐突に現れた亜由美に驚愕している。 彼らは高等部の制服を着ていた。この体育倉庫は中等部と高等部で共用しているので、そこまでは別に不思議ではない。 だが彼らが手にしていたのは、何かの小さな器具や、小さな袋をいくつも入れたビニール袋、そして結構な枚数の紙幣だった。 まるで、何かの取引をしていた様だった。 その光景には既視感がある。亜由美はごく最近、これと似たような場面を見た覚えが・・・そう、それは今朝方だ。 『科学捜査官8823』のシーズン1は、後のシーズンに比べると、はっちゃけた話が多い。 たとえば、古代文明人の血を引くと言われている者達の村が、クーデターを試みる話があった。 その話で武器の取引をしていた場面があり、今の光景と雰囲気がそっくりだ。 「まるで」ではない。これはもろに何かの取引をしていた所なのだ。 体育倉庫で隠れて行っているという事は、当然その取引は秘密だと考えるのが妥当だろう。 つまり・・・この状況は、とてもまずい。 「すみません、お邪魔しましたぁ」 亜由美はそそくさと、倉庫から立ち去ろうとする。 しかし彼女のいたのは倉庫の奥で、そっちに出口はない。窓は狭くて高い所にあり、出られそうにない。 倉庫から出たいなら男たちの横を通るしかないが、黙ってそれを見逃してくれるはずもなかった。 「捕まえろ!」 男の1人が指示を飛ばす。 彼らのうち3人は制服を着ておらず、年齢もずっと高い。指示をしたのはその中の1人だ。 残りの男子生徒たちは反応が鈍かったが、制服を着ていない面々は素早く動き、亜由美はあっけなく捕まってしまった。 腕を掴んで捻り上げられる。 「いたたたた」 「騒いでも無駄だ、もう他の生徒はいない。だが、大人しくしてな。痛い目に遭いたくないだろ?」 亜由美を捕まえた男が、そう釘を刺す。 「もう痛いです」 「・・・まあ、これ以上痛い事をされたくないだろ?」 不満そうに言い返した亜由美に、男は戸惑いながら、念を押しつつも手を緩めてくれた。 そして彼女は、男たちの真ん中に無理矢理座らされる。 さっき指示をした、リーダーらしき男が男子生徒たちに聞いた。 「これは誰だ?」 男子生徒たちも首をひねる。 「ええと、誰だろ。この制服は中等部だな」 「あっちにこんなに可愛い子いたっけ」 「こんな子だったら、一度見たら覚えてそうなんだけどなあ」 「さすがに知らねえよ、あっちに知り合いいないし。でも可愛いな」 どうやら基本は褒められてるっぽいが、経験上、亜由美は素直に喜べない。 リーダーは、今度は亜由美に直接聞いた。 「お前はなんであんな所にいたんだ?」 「実はお昼に探し物をして、眠かったのでつい、寝ちゃったんです」 「はあ?」 「最近寝不足だったので、つい」 「・・・本当だとすると、ずいぶん運が悪かったな」 「あのですね。ここで何してたかは聞きませんし、誰にも言わないようにするので、帰っちゃだめですか?」 「・・・できる訳ないだろう、そんな事」 物おじせずに受け答えする亜由美に戸惑いながら、リーダーはその要望を却下する。 「ですよねえ・・・」 亜由美は肩を落とす。 駄目元で聞いてみたのだが、やはり駄目だった。 『科学捜査官8823』のそのシーンでも、取引を目撃した娘は、そのまま捕まっている。 あうう。あたし、どうなっちゃうのかなあ。 亜由美は不安そうに周囲を見る。できれば殺されるような状況に陥りたくはない。 『科学捜査官8823』では、捕まった娘は結果的に生還したが、あれはあくまでエンターテイメントであって、現実は違う。 誰も命の保証などしてくれない。 かなり不安な状況だが、彼女は何となく現実味を薄く感じた。まるでドラマでも見てるようだった。 まだ寝ぼけているのか、それとも現実逃避してしまっているのか。 いや、元々から自分は、現実の捉え方がちょっとおかしいのかもしれない。 「殺すのは後始末が面倒だ。お前らだって、自分が原因で誰か死ぬのは、気分が良くないだろう?」 リーダーの発言は、男子生徒たちに向けられた物だ。 亜由美は若干の希望を持って、リーダーを見つめる。 この流れなら、死なないで済むのかな? ・・・あれ。このひと、何だか見覚えがあるような? どこでだっけ。『科学捜査官8823』に、こんな感じの役者、出てたかなあ? 男子生徒たちがきまり悪そうに答えた。 「それはまあ・・・そうかなあ」 「だからって、見られたんだから、帰す訳にいかないだろ」 「でも確かに、これで死なせるのはちょっと気持ち悪いな」 「こいつ、結構可愛いし、勿体ないよな」 最後の生徒の呟きをリーダーが拾い、反復する。 「ふふ、そうか、勿体ないか。それならこちらで有効利用しよう」 「有効利用?」 勿体ない、の発言をした生徒が聞き返す。 「この娘は俺たちが連れて帰る。俺の手の掛かった店で働かせよう」 「店って・・・」 男子生徒たちが顔を見合わせる。 同時に亜由美も少し腰を浮かせた。 リーダーはにやりと笑い、言葉を続けた。 「むろん、そういう店だ。説明はいらんだろ?」 そして、部下たちに手で合図しながら言い放つ。 「せっかくだ。今日はお前らがその娘に、店でやる予定の事を、予習させてやれ」 「えっ・・・」 「お前らは上客だからな、今回はサービスだ。遠慮はいらんぞ、後始末はこっちがするんだから」 おお、という表情で男子生徒が亜由美を一斉に見た。 つまりこの可愛い子を後腐れなく、好きにしていいと言われた訳だから。 亜由美は咄嗟に立ち上がり、出口に向かって駆ける。 このリーダーの正体も出自も判らないが、彼の言う店とやらがどんな物なのか、彼女にだってだいたい推測できる。 そんな所で働かされるのは、正直嫌だ。 倉庫の出口は既に部下が固めていた。 彼女はそこで立ちすくむ。とてもではないが、ここを突破できそうになかった。 亜由美はリーダーに抗議した。 「あたし、あんまりそういうお店で働きたくないんですけど」 「ほお、どんな店か想像はつくんだな。なに、死ぬよりはいいだろう?」 「そりゃ、そうでしょうけど、やっぱ嫌ですよぉ」 「まあ、あきらめるんだな」 相手の微妙に緊張感に欠ける言葉に、若干面食らいながらもリーダーは冷徹に言い放つ。 亜由美が振り向くと、後ろからじりじりと男子生徒が寄ってきていた。 誰も彼もがやる気満々だ。下品な方の意味で。 さっき、自分たちが原因で亜由美が死ぬのは好ましくないと言っていたが、所詮はその程度だ。 いざとなれば、彼女が死んでも仕方がないと思っていそうだし、手籠めにした後でなら、勿体ないとすら思わないのだろう。 あうう、こんなのにされちゃうの、やだなあ。 彼女はまた駆けだす。倉庫の奥の窓から逃げられないかという、一縷の可能性に掛けたのだ。 しかしそれ以前の問題だった。窓にたどり着く以前に、あっけなく男子生徒の一人にタックルされ、床に引き倒される。 「やだったらやだあ、この、このお」 亜由美はせめてもの抵抗で、相手をぽかぽか殴りつける。 それを押さえつけながら男子生徒が叫んだ。 「おい、縛るものないか?」 「紐があるぞ」 「あ、これも使えそうだな」 手に手に小道具を持ち、他の男子生徒が近づいてくる。 こうなると多勢に無勢だった。 体操マットの上に押し倒され、両手は掃除器具らしき棒に縛り付けられて、抵抗を封じられる。 「あう、あう、やだやだやだ」 亜由美は、今度は脚を振り回すが、すぐに押さえつけられた。 スカートを掴まれ、ずり降ろされる。更にパンツに手を掛け、それも脱がされた。 下半身を裸にされ、足を2人がかりで大きく広げられる。 「やだぁ、見るなあぁ」 丸出しの股間を晒され、亜由美が抗議するが、男子生徒達が聞く耳を持つはずもない。 「おおー、すげえ」 「パイパンだ、初めて見た」 「生えてないだけじゃないか?」 「まるで、子供のみたいだなあ」 「いや本当に子供だろ?こいつ」 「未使用だぜ、これ。きれいなもんだ」 口々に感嘆の声が上がる。経験者も混じっている様だが、亜由美みたいな可愛い子をなぶりものにするのは、やはり新鮮なのだろう。 「よし、誰が最初にやるか決めよう」 「ジャンケンな」 「じゃあ、せーの」 彼女の身体越しにジャンケン大会が開催されたが、あっけなく2回で決着する。 亜由美の足を抱えていた一人がチョキ、残り全員がパーだったのだ。 「よおっし、俺だな?」 「ちぇ」 「くそ、いいな」 「へへ、じゃあ・・・」 亜由美の足担当を別の生徒に交代すると、彼はズボンのジッパーを降ろす。 ぼろん。 勃起したペニスが躍り出た。 「あうう・・・」 さすがに亜由美は怯える。 写真ならともかく、生のソレを見るのは、父親以外は初めてだ。 まして勃起した代物など、初見もいいとこだった。 一番手の生徒が、そのペニスを亜由美の顔の前に突き出す。 「どうだ。これをこれから突っ込んでやるんだぜ?」 「やだ・・・ね、やめてよ・・・」 首を振って亜由美が懇願する。 こんな状況での初体験など、できれば避けたい。 だけどこの状況をどうにかする手など、亜由美にはない。 相手が1人なら隙を窺って、まだどうにかできる可能性も僅かにあるだろうが、8人もいてはどうしようもない。 そして参加してない3人も、彼女が逃げようとすれば当然阻止に掛かる筈だ。 すぐ横から、別のペニスが突き出された。 「その次は俺だからな。俺のはもっと太いぞー?」 「ひえぇ・・・」 言うだけあって実際に太い。こんなの入るんだろうかと怯んでしまう。 「ほれほれ、その次は俺だぜー?」 「俺のもお待ちかねだぞ」 「へへへ、俺だってもうこんなだぜ?」 男子生徒たちが次々に、亜由美に自らのペニスを誇示していく。 彼らは既に彼女を犯す順番を、もう最後まで決めてしまった様だ。 「あ、あ、あ・・・やだよお・・・」 目の前に、男子生徒達の様々な形状のペニスが何本も突き出され、亜由美は半泣きになった。 やっぱり、助からないらしい。 殺されるよりましと言われても、そもそもこんな目に遭ういわれがないのだから、慰めにもならない。 知ってるけど。世の中はそんな物なのだと。 『科学捜査官8823』でも、しばしば落ち度のない人物が被害者になったり、死んだりしていた。 ドラマですらそうなのだ。それでもドラマなら、まだ逆転とか救いが入る可能性はある。現実だとそれすら期待できないけれど。 だからこそ、彼女はあのドラマが好きだった。現実に似ているけど、それより少しだけましな、あの世界が。 「やめてぇ・・・」 世の中がそんな物だと判っていても、被害者になるのが嫌なのに代わりは無い。 そして亜由美が嫌だろうと何だろうと、相手は気にしないのもやはり現実だ。 くにゅ。 「ひゃ」 未発達の性器を指でまさぐられた。指がそのまま、中に割って入る。 「い、いたい、やだ、やだ」 精一杯もがくが、手は縛られ、足も押さえつけられている。 逃げようもなく、中を好き放題中を探られるだけだ。 「やっ、やっ、あうっ」 「うへ、中もやわらけぇなあ」 「おい、早くしろよ」 感触を堪能する一番手に、二番手が不満そうに言う。 「ちぇ。まあいいか、2周目もありだよな?」 「ありでいいから、早くしろって」 「やっ、やっ、やめて、やめてぇ」 亜由美の哀願は当然の様に無視される。 もっとも、もしこの男子生徒がやめてくれても、2番手が繰り上がるだけだ。 万一、男子生徒8人が全員許してくれたとしても、あの3人は見逃してくれそうにないから、行く末は大差ない。 まあ、目の前の男子生徒の、欲望にたぎった顔を見ている限り、いかなる哀願もその心に届く気はしないけれど。 つまり、無駄な哀願だ。そんなのは亜由美にも判ってる。それでもやはり言ってしまうだけだ。 指を抜かれると、同じ場所にペニスをあてがわれた。 「やだぁっ・・・やだ、やだ」 流石に恐怖に駆られ、泣き叫ぶ亜由美のそこに、力が込められた。 ぐ、ぐぐっ・・・ぶつんっ! 「ぎゃうっ」 びくん! 少女の身体が小さく跳ねる。 亜由美の小さな性器に、大人並みのペニスが食い込んでいた。 こじ開けられた粘膜の隙間から血が滲み、おしりに回り込んで、マットを濡らす。 後は、あっけなかった。一気に奥まで突きこまれていく。 ぶち、ぶちっ、ぐり・・・めりっ。 「うあ、う、ふぎゃあぁっ」 亜由美は絶叫した。 目茶目茶痛かった。一番奥まで入っているその全てを痛覚として感じる。、 転げまくりたいほどの痛みだが、身動きできないので、余計に辛い。 そしてペニスは動きを止めなかった。 奥まで突いては少し戻り、また突いては少し戻り、そしてまた突く。 「ひぃっ、ひっ、だめ、う、動かない、でぇっ・・・」 既に亜由美の性器は血まみれで、それを潤滑剤にしてペニスが動き、粘膜を痛めつける。 ぽろぽろ涙を溢れさせながら、亜由美が必死で懇願する。 「痛い、だめぇ、動いちゃだめ、だめぇ、あっ、いや、いやぁ」 むろん、男子生徒はまったく聞いていない。 自らのペニスが根元まで、小さな少女の華奢な性器を貫き、中から膨らませてしまっているその有様に、すっかり興奮している。 この中を、もっと奥まで犯したい。もっと目茶目茶にしてしまいたい。 そんな衝動に駆られ、夢中で突き込み、叩きつける。 がくん、がくんと亜由美の身体が揺さぶられ、結合部から血が流れる。 ぐり、みちっ、みし、ぐちっ。 「い、あっ、いや・・・いや・・・あ、ああ・・・」 やや遠巻きにその惨状を見物していたリーダーがつぶやく。 「なんだ、初物か。少し惜しかったか」 「なんであいつらに、あっさり娘をやらせたんですか?」 部下の一人が尋ねた。亜由美が逃げられる状況ではないので、もう入り口を固めてはいない。 「ずっと撮影してるな?」 「はい、一部始終を」 「強姦現場の記録だ。交渉の持ち札は多い方がいい」 「あ、確かにこれだとあいつらが主犯ですね。でも何の交渉を?」 「新たな商売を画策中なのさ。新規の市場開拓のためには色々しなきゃな」 「いいんですか? 組長はどちらかと言うと・・・」 「確かに学生相手の商売にいい顔をしていないし、今やってる事もばれたら止められるだろうが、実績を積み重ねていけば、最終的には認めるしかないだろ?」 「なるほど」 「しかし・・・初物は金になるから、少しだけ勿体なかったが、仕方ないな。態度が変だから、てっきり経験済みなんだろうと思った」 とうとう1人目が亜由美の中に射精してしまい、その動きが一旦止まる。 「う・・・う・・・」 中に何かを出されたのを、亜由美は感じる。それが何であるかは彼女にも判った。 あうう・・・中に出されちゃったよぉ・・・ 数日前に生理が終わったばかりで、妊娠の危険がないのが、わずかな慰めだった。 それに、動きを止めてくれた事も正直助かる。 じっとしていても痛いのに、動かれている間の苦しみは、まさに筆舌に尽くしがたい物だった。 「うそ・・・つきぃ・・・もっと痛い目に・・・遭っちゃったよぉ・・・」 少女の呟きは、男性生徒達には意味が良く判らない。 それはそうだろう。あの部下の一人が言った言葉に、亜由美は文句を言ったのだから。 亜由美にとって、わずかばかりの安寧はすぐに終わる。 「ひうっ」 ぎゅぽ。血まみれのペニスが一気に引っこ抜かれた。 男子生徒側は2番手に交代し、新たなペニスが彼女に挿入されていく。 ぐちゅ、めりめりめりぃっ! 「うぎゃうぅ・・・だめ・・・こわれ・・・あぐっ・・・」 自分で太いと豪語していただけの事はあった。膣が更にこじ開けられ、亜由美はのけ反って悶絶する。 もちろん、2人目も大人しくしてくれるはずがない。 彼女の中へペニスの出し入れを始め、亜由美を内部から責め立てる。 「あ、う・・・だめぇ・・・うごくの・・・やめてぇ・・・」 泣きじゃくる亜由美の顔に、精液が浴びせられた。 待ちきれなくなった3人目が、亜由美にペニスを向け、手でしごいていた。 4人目以降も同じことをはじめ、彼女の身体は徐々に精液まみれになっていく。 「やめてぇ・・・いたいよぉ・・・やめてぇ・・・」 小さな身体には酷な経験だ。 性器からの出血が止まらない。入れられたペニスがすぐに真っ赤に染まっていく。 最初にそこを犯した、これも血まみれのペニスが亜由美の口に突っ込まれた。 「ん、ぐぶ・・・うう・・・」 あとはもう、くぐもった悲鳴しか出せなくなる。 上と下を同時に犯されながら、亜由美は頭の中でぼんやり考えていた。 あの捕まった女の子、本当は何されたんだろ。 ドラマではそれっぽい光景が出なかったけど、あの番組、全年齢向けだもん。何かされても描写できないよね。 やっぱりあの子も、こんな事されちゃったのかなあ・・・可哀そうだなあ・・・ ああ、でも、もう他人事じゃなかったな。 自分があれと、同じ目に遭っちゃうなんて。 あっちはドラマだから、本当の本当は犠牲者はいないけど、こっちは実際にされちゃってるもん。 実際に・・・あ、そうか・・・もうあたし、お家に帰れないのか・・・。 まだシーズン1、見終わってなかったのに。シーズン2なんか手付かずなのに。 あうう・・・見たかったよぉ・・・ 「んうう・・・うう・・・」 塞がれた口の奥から、うめき声を漏らす亜由美の身体を、男子生徒たちはひたすら犯し続けた。 延々と続いた凌辱が終わり、男子生徒たちは亜由美から身体を離す。 彼女はマットの上で、ぐったりと身体を弛緩させていた。 手はもう縛られていない。そもそも途中から、まったく抵抗できなくなっていた。 制服はさらに破られ、上が多少残っている程度になっている。 身体はそこら中が精液まみれで、目も虚ろだ。 股間から、血の混じった精液をとろとろと溢れさせている。 「こいつは俺たちが連れて帰る。後始末もしておくから、お前らはここで帰れ」 リーダーが宣言する。 男子生徒たちは充分に気が済んだのか、亜由美の事をさほど気にする様子もなく、服装を整えると倉庫を出て行った。 「お前は、女を先に車に運んでおけ」 リーダーの言葉に、指示を受けた方の部下が聞き返す。 「このままで?」 「ああ、構わん。トランクに入れておけ」 「判りました。おい、起きろ」 「・・・う・・・あぅ・・・」 部下の一人が、ふらふらの亜由美を強引に引っ張り起こす。その後ろで、もう一人は散らばった小物を片付けていた。 亜由美は体育倉庫の外に連れ出される。周囲はもう完全に夜だ。 部下は、停めてあった黒っぽい車の後部トランクを開け、亜由美を中に押し込む。 そしてトランクを閉められた。光源がないので中は真っ暗だった。 トランクがまた開いた。 「あれ?」 亜由美は怪訝そうな声を上げた。さっき閉まったばかりなのに? ・・・いや、違った。 どうやら真っ暗になった後、彼女はすぐに眠ってしまったらしい。 あの状況で眠れるなんて、どれだけ睡眠不足だったんだと、少し自分でもあきれる。 ただ、おかげで気持ち的に、少し元気が戻っていた。 身体の方は酷いままだったにしても。 股間はずきずきと痛むし、足もどこかで筋も違えたようで、痛い。 車は地下駐車場に停まっていた。 トランクから引っ張り出され、リーダーの後ろから部下に連れられて、亜由美はエレベータに乗せられる。 ドアが開き、やや大きめの廊下に出ると、そのまま引き立てられる。 そこにいた男たちは、訝しげにリーダーが連れている、半裸の中学生の少女を見るが、何も言わない。 こういう状況に慣れているのか、そのリーダーならやりそうだと思ったのか。 亜由美はそのまま、建物の奥の方に連れていかれる。 あれえ・・・? 亜由美は違和感を感じた。 いや、これは違和感と言うより・・・既視感? 何故か建物の構造に見覚えがある気がするのだ。 つい立ち止まり、周りを見回していると、廊下の先で、角を曲がってきた、書類を手に持っている年配の男と目が合った。 その男は眉をひそめ、怪訝そうにつぶやく。 「おや・・・?」 「・・・あれ?」 亜由美も怪訝そうだ。その年輩の男と、面識がある気がする。 立ち止まったままの亜由美に、リーダーが苛ついた様に言った。 「何をしてる。来い」 「きゃっ・・・」 腕を引っぱられ、彼女はバランスを崩して小さく叫ぶ。まだ足腰に力が入らない。 そして廊下の先、年配の男の後ろから、いかつい顔をした、部下を何人も連れた壮年の男が現れた。 「あ、組長」 リーダーが慌てて、姿勢を正す。 そして亜由美は驚きながら、思わずその男に言った。 「パパ・・・?」 呼ばれた男も、ぎょっとした顔で亜由美を見返し、思わずつぶやく。 「亜由美? なんで・・・」 「え?」 リーダーが亜由美と組長を見比べ、驚愕の表情を浮かべる。 確かに組長には娘がいた。ずいぶん前に一度だけ会った事もある。 だがその娘はメガネをかけ、もっと地味で野暮ったかったはずだ。 組長は、少し呆然とした表情のまま、亜由美を舐めるように見つめる。 ぼろぼろの制服が申し訳程度に残り、下は裸にされ、渇いた精液の残る身体のあちこちに痣があった。 下腹部辺りは赤黒く腫れ、股間から血と精液の筋が内股に伝っている。 あきらかに、これ以上ないほど明白な、いわゆる事後だった。 彼は、娘のすぐ横にいるリーダーにゆっくり視線を動かした。 冷たい表情で口を開く。重々しい声が言った。 「言い訳を聞かせて貰おうか?」 絶句しているリーダーの横で、亜由美は自分に対し、心の中で突っ込みを入れる。 そっか。うっかりしてたけど、良く考えたらそうだった。 ここは日本だもん。怪しい取引をしてたら、古代人なんかよりも、普通はこっちの業種を真っ先に疑うべきだよね。 あたし自身は取引現場なんて見た事なかったから、ぴんと来なかったけど。 あうう、やっぱり寝不足だと駄目だなあ。 <エピローグ> その後、亜由美はすぐに病院に運び込まれた。 運ばれる前に父親から、リーダーの言い分ではなく彼女の視点で、何が起きたのかを教える様に言われたので、一連の経過をごく簡潔に、淡々と、何も脚色せずに伝えてはおいた。 さすがにどうして寝不足だったのかは言わなかったが、幸いそこは追求されなかった。 その後の成り行きは知らない。ずっと入院していたのだから。 毎日のように父親が見舞いに来たが、現状についての説明はなく、彼女もわざわざ聞かなかった。 やがて退院し、彼女にとっての日常が戻る。 基本は事件前と変わっていない。 学校に対しては、急病でしばらく休んだ事にしたが、特に追求は受けなかった。 おかげでというか、あの日の授業のすっぽかしも有耶無耶になった。 だから以前と同じ、目立たない生活を続けている。 まだ幼かった頃、可愛いだなんだと持ち上げられた事があったが、その後に家業が知られてしまい、関係が気まずくなった経験を持つ彼女の、それが処世術だった。 彼女を輪姦した男子生徒たちだが、事件後に見かけた事はない。 それはさほど不思議ではないはずだ。おそらく。たぶん。 元々校舎が違うし、向こうは彼女の学年もクラスも名前も知らないから、押しかけて来ようもない。 亜由美も用事もないのに高等部の校舎に行くことはないし、彼らについての仔細も知らない。 あのリーダー一味が輪姦の一部始終を撮影していたそうなので、その気になったら父親に頼んで調べてもらう事はできるだろうが、別に会いに行きたい訳ではないのでどうでもいい。 父親の事務所にもあれから行っていないが、これは別に事件のせいではない。 もともと事務所にはめったに顔を出した事はなかったのだ。 本当は、もっと行っておくべきだったのかもしれないけれど。 多少変わった事はある。 退院して以後、父親がほぼ毎晩、彼女の部屋に来るのだ。 妙な事を想像するかもしれないが、全然そんな話ではない。 じっと彼女が寝るのを待っているだけで、彼女が寝たら立ち去っているらしい。 さすがに毎日それが続くので、とうとう理由を聞いてみた。 亜由美が妙な事をしでかさないか、心配だと言った。 妙な事とは何かは、いくら聞いても教えてくれなかったが、言動から彼女が自殺する事を警戒してるらしいと判ってくる。 正直言って、亜由美はそれにかなり面食らった。 彼女はあの事件がそれほどは堪えていなかったのだ。 確かに処女の失い方としては最悪だったし、入院が必要なほど酷く暴行もされた。 間が悪ければあのまま、非合法の隠された店で、性風俗の仕事をやらされていただろう。 もっと下手な流れになっていれば、あっさり殺されていたかもしれない。 でも結果としては、家には帰ってこれたし、処女を失った以外は特に回復不能な傷も負っていない。 ならばまあ、おおむねは良しだ。何より、死なないで済んだのだから。 だから亜由美の中では、事件はもう済んだ事であり、思い出して怯えたり、まして今更自殺するような物ではない。 特にトラウマにはなっていないのだ。 むしろこの状況は、まるで彼女ではなく父親がトラウマを負った様に見える。 父親には、輪姦された娘はいずれ自殺してしまう、と思い込む理由でもあるのだろうか。 それとも・・・と、亜由美は考える。 あたしの方が変なのかなあ? 普通の子はもっと、いつまでも怯えちゃったり、突然自殺しちゃったりするのかなあ? 確かにパパのお仕事を知ってるから、何て言うか、覚悟みたいのをずいぶん前からしちゃってるけど。 だから自分でも、変に神経が太い所があると思う。 もちろん具体的に危なかったら怯えるし、痛かったら素直に泣くけど。 本当に危険な事になるまで、あまり取り乱さなくなっちゃった。 そんなあたしの方が変なのかなあ・・・変かもしれない。 あうう、だめかなあ、こんなの。 でも、困ったなあ。 あたしが寝るまで、パパが寝られないなんて。 これじゃ夜更かし、ぜんぜんできないよぉ。だってパパが身体壊しちゃうもん。 それに、あれから『科学捜査官8823』の録画をまだ見れてない。 せっかくお家に帰れて、良かった、続きが見られるって喜んだのになあ。 シーズン3の録画も、どんどん溜まってるし。どうしよう。 パパがあたしをじっと見てる。あたしが寝るの待ってる。 どうしようかなあ。 パパが当分このままなら、せめて『科学捜査官8823』見るのだけでも許して貰えないかなあ。 今なら、甘えたらそのくらいは、いいよって言ってくれそう。 でも・・・ひとが困ってるのに付け込むの、やっぱりやだなあ。 パパが心配そうに言う。 「眠れないのか?」 「え、ううん、大丈夫」 確かに怖い顔かもしれないけど、あたしには優しいパパだもん。 さて。どうしよう。 あうう、困ったなあ、どうしよう・・・。 <終わり> ------------------------------------- その科学捜査官の正体、海底人じゃあるまいな。 てか私も見たいんだが、そのドラマ。 あと今なら、亜由美ちゃんが甘えておねだりした場合、パパは多分、ドラマを見る許可どころか、 ブルーレイBOXだの限定盤だの記録全集だの劇場版だの、その時点で出てる関連商品を ありったけ買い集めてきそうなんだが、どうか。 なおパパが亜由美から目が離せないのは、ある男への見せしめでその娘を若い衆に輪姦させたら、 その時は気丈そうに振る舞っていた娘が、翌日あっけなく自殺してしまった経験があるため。