『教育の重要性』

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「・・・ここ?」
小さな女の子が戸惑った様につぶやいた。
場所は学校の校門前。女の子の方も制服らしき物を着ている。
言葉にすると何の問題もなさそうだが、実際の状況はいささか違う。

女の子は10歳を少し超えたあたりで、小学校の高学年か中学校の低学年辺りだ。
ところが学校の校門には高校の名前が書かれている。
更に校門には周囲の塀も含め、あちこちいたずら書きがしてあり、所どころ崩れて、全体が薄汚れている。
はっきり言って、雰囲気が悪い。
少なくとも、その可愛らしい女の子が通う様な雰囲気ではない。

その少女は大き目のバッグを両手で抱えたまま、立ち尽くす。
何度も校門を見直し、名前を間違えていない事を確認し、しかし中に踏み込むのをためらってしまう。
だがそこで、学校内から薄青色のスーツを着た若い男が出てきた。
「木下真奈美(きのした まなみ)ちゃん?」
「は、はい、そうです」
「交換学習会だよね? ならこっちだよ、おいで」
男は穏やかな顔に爽やかな笑顔を浮かべ、校内を指し示す。
「・・・はい。ここでいいんですね?」
「あ、何かこの辺って汚いだろ? 近いうちに工事しようかって話が出てるよ」
「そうなんですか」
少女はほっとする。相手はおそらく担当の教師だろう。
そしてこの辺りの雰囲気が良くないのを相手も認めているのなら、実際には大丈夫なのだろうと。

二人は校舎の敷地内に入る。
いささかゴミが多く、壊れている施設も目立つ。
彼女を案内する男が肩をすくめ、言った。
「この辺も何とかしなくちゃね。まあ今日はいいだろう。こっちだよ」
「は、はい」
相手の歩く速度が速い。真奈美は少し急ぎ気味で追いかけた。

校舎に入ると、中は外に比べる整っており、掃除もちゃんとされている感じだった。
ただ授業中にしても、やけに静かだ。
「ここだよ」
男が、1つの教室の前で立ち止まると、扉を開けた。
彼に続いて扉をくぐる。
そこは教室の教卓側で、左手側には机と椅子がずらっと並び、生徒たちが座っていた。20人よりは多い。

「はい注目、交換学習会のために来てくれた木下真奈美ちゃんだよ、みんな挨拶して」
彼の言葉に、座っていた男たちが一斉に席から立ち上がると、そのまま頭を下げる。
「はじめましてっ、よろしくっ!」
いかつい顔の入り混じる高校生たちの、怒号にも聞こえる挨拶に、真奈美は若干たじろぐが、踏みとどまる。

別に相手が変な事をした訳ではないのだ。単に大声で挨拶しただけで。
やけに、にやにや笑っている者が混じっているが、だから即だめという事もないはずだ。
どうにか声を振り絞る。
「今日は、よろしくおねがいします・・・」
「おおー」
「いやいやいや、本当に来てくれるとはなあ」
「かわいいねえ」

返ってきた声には、野次じみた声も混じっていた。
真奈美は笑顔をひきつらせながらも、どうにか納得しようとする。
大丈夫、あの教師がにこにこしながら、こっちを見ている。
顔が怖い人もいるけど、きっと本当は気のいい人たちなんだ、と。

とりあえず、真奈美は持ってきた自作の教材を教卓の上に出していく。
本来なら、あちこちで調べた事のおさらいを兼ねた学習発表のはずだった。
元々の話だと、相手も中学校だったはずなのだが、どういう手違いがあったのだろうか。
中学生になりたての真奈美が集めた程度の内容が、高校生たちに意味があるかは微妙だ。
そして交換と言う事は、ここの高校生の同級生も、誰かが真奈美の学校に行ったのだろうけど、その内容が同級生に追いつけるのだろうか。
だけど、もう始まってしまったのだ。やるしかない。
内容が相手にとって幼稚すぎて笑われるかもしれないが、今それを考えても仕方がない。


発表の途中で、実演相手が最低一人必要な状況になった。
真奈美は前列に座っていた生徒から、比較的背が低くて圧迫感がなく、顔が厳つくない相手を選ぶ。
そして、自分が既に被っているのと同じ、花の絵が描かれた紙製の冠をかぶってもらった。

黄色く塗ってある紙風船を膨らませてから、うちわとセットで渡す。
そして3メートルほど離れたところから、紙風船を飛ばしてもらい、うちわで扇いでもらう。
ふわふわと空中を漂ってきた紙風船を真奈美が急いでキャッチした。
「こんなふうに、風に花粉をはこんでもらうのを『ふうばい』といいます。ふうばいをするのは『らししょくぶつ』というのに多くて・・・」

幾つかの要点を黒板に書き記しながら、真奈美は説明を続ける。
どうにもいたたまれない。
彼女の今回の発表内容は、今やっている通り、花と受粉についての基礎だ。
少し気合を入れて調べれば、ある程度の学年ならおそらく誰でも集められる程度の情報でしかない。
本来はそれで構わなかった。
軽いお披露の予定だったので、こういうお遊戯みたいな軽い内容で統一したのだ。

でも高校生相手に披露するには、あまりに子供向け過ぎた。
判っていたら、せめて以前研究した、状況別の花粉管の発生みたいな突っ込んだ内容の物を持ってきたのに。
幸い、この高校生達はからかうような顔をしている者はいても、野次を飛ばしたり、内容に苦情を言ったりはしてきていない。それがかろうじて救いだった。

次の内容については、真奈美は説明だけで済ませる。
「・・・というわりあいになります。あと、風ではなくて水にはこんでもらう『すいばい』や、虫などにはこんでもらう『どうぶつばい』があります」

蜂の絵が付いた冠も、実は持ってきていた。
あと一人手伝いを追加し、紙風船を運ぶ蜂の役をやってもらうつもりだった。
でもここで追加のお手伝いを頼む度胸がなくて、だから実演を省略してしまった。
他にもいくつかの項目を巻いたり、黒板に書くだけで済ませてしまったため、そろそろ終わりが近い。

「・・・そして、ふつうに見かける、花のさいている草木は、『ひししょくぶつ』と言います。被子植物では、めしべに花粉がくっついたあとに、実はその花粉から、『花粉管』というくだがのびます」
花の模式図を黒板に書いた後、かばんの中から、まず「めしべ」とかわいい字で書いてある札を取り出した。
それを自分の首にかける。花の絵の冠はそのままだ。

今度は丸い黄色の絵がくっついている冠をとりだすと、花の絵の冠をつけている男子生徒に渡す。
小声で「頭のを、それにかえてください」と頼んだ。
次に、花粉管代わりの巻尺をかばんから取り出し、振り返った所で真奈美が固まった。

「カフンカン」
花粉の絵の冠を付けた男子生徒が、にやにやしながら言った。
真奈美はまだ、巻尺を持ったまま固まっている。その目線は相手の股間に釘付けだ。
ズボンの前が開いていて、中から男性生殖器、平たく言えば「おちんちん」が丸出しになっている。
「ほら、カフンからカウンカンが伸びたぞお?」
腰を突きだし、それをぶんぶんと揺らしながら、男性生徒が得意げに言う。

席に座っていた男子生徒が何人か立ち上がると、教壇に向かってくる。
そしてめいめいが、同様にズボンのファスナーを開けてペニスを外に放り出す。
「カフンカン追加ー♪」
「ほらほらカフンカン」
「おれのカフンカンでかいぞー」

「や、や・・・」
真奈美は思わず後ずさり、助けを求めるように周りを見た。
あの若い優男が呆れたようにこちらを見ている。そこに向かって叫んだ。
「先生、こ、こんな、ふざけるの、やめさせてください!」
「ん? 無理ー」
「え、どうして」
「僕、先生じゃないから」
「・・・先生、じゃない?」
「僕も生徒だよ。このクラス、担任いないんだよ」
「そんな・・・」

周りを取り囲まれ、黒板に追い詰められて半泣きになった真奈美に、優男からの声が飛ぶ。
「でもね、大丈夫だよ」
「だ、だいじょうぶ? そうなんですか?」
「全員で、わっと襲ったら真奈美ちゃん死んじゃうからさ、8人ずつでやることになってるから。あ、僕2回目ね」
「・・・ひっ・・・い、いや・・・」
とん、と背中が黒板に当たった。もうこれ以上は下がれない。

「じゃあマナミちゃん、ジュフンしようかー」
男たちの一人が彼女の手を掴まえる。
「あ、あ、いや・・・」
わらわらっと手が伸び、彼女の頭を、肩を、もう片手を捕まえる。
「い、いやあああああっ」
真奈美が絶叫し、そして男たちは一斉に彼女に群がった。

力と人数の差で、抵抗が抵抗にならない。
あっという間にぱんつをずり降ろされ、複数人の手が性器に掛かり、そこを弄り回す。
「や、や、やめ、あ、いやっ」
床に押し倒されて、いきなり挿入された。
「うぎゃう・・・い、いたいぃ」
「どうだ、俺のカフンカンはー?」
挿入した男のものらしい笑い声が聞こえる。

すぐ近くの床に、花の冠が落ちていた。
それを誰かの足が思いっきり踏みしめる。
「あ・・・あ・・・」
ちゃちな工作物かもしれないが、一生懸命作った物だ。
それが一顧だにされず、ぐりぐり踏みにじられるのを見て、真由美は泣き出した。
「やだぁ・・・やめてよお・・・」

だが彼女の口にすぐにペニスが突っ込まれて、もはや叫ぶこともできなくなる。
「ん、んんっ・・・んー・・・」
喉の奥まで突っ込まれて噛む事も難しい。
それに人間の肉をいきなり噛み千切るなど、覚悟を決めていないとできるものではない。
両手にも何か握らされ、そして顔に突然液体を掛けられる。

「うくふ・・・んぐ・・・」
体の奥を荒々しく突かれ、その激痛を堪えながら、真奈美は弱々しく助けを求める。
口を塞がれそれは声にすらならず、さっき大声で叫んだのに対しても、いまだに誰も来る気配がない。
そういえばこの教室の周辺には人気が無かった。途中で誰にも出会わなかった。
「ん、ん・・・ん・・・」
そして真由美は抵抗をあきらめる。男たちの勢いに逆らう事に命の危険を感じてしまった。
死にたくないのなら、この奔流に抗わず流されるしかなかった。


ふと気が付くと、真由美は床をぼんやりと見下ろしていた。
自分も、直接木の床に座っているようだ。スカートはなく、下半身は裸で、おしりがじかに床に着いている。
体がやたらあちこち痛い。特に股間が、散々叩かれでもしたみたいにずきずきする。
大事な所もお尻の穴も、焼けたように熱く痛み、奥から何かがじくじくとあふれ出ていく。
体中に白っぽくて濁った液体が浴びせられていて、顔にも何かが掛かっている。

自分が何故、そんな状態なのか判らない。
・・・いや。正確には判らないのではない。判りたくなかった。
彼女はもう、何も考えたくなかった。さっきまでされていた事を、思い出したくなかった。
全てが悪い夢なのだと思い込みたかった。
だが、体の痛みと、犯されたばかりの生々しい感触がそれを許してくれなかった。
じわりと涙があふれてくる。
犯されている最中、何度も泣き叫んではいたが、今また、少女は声もなく泣きはじめた。

死んだ目で、呆けたようにぺたんと座り込んでいた真由美を、生徒の一人が嘲笑する。
「はは、泣きだしたぜ。ざまあみろ」
「なんだよ、あれに恨みでもあんのか?」
ズボンを脱いだままの隣の男が不思議そうに聞く。
「いいや、でもあいつ、難しい話ばっかしてたろ。ああいう頭いい女をヤっちまうとすっとするんだ」
「確かに頭良いよな、あいつ。何言ってるかずっとちんちんぷんぷんだったぜ」
「それ、ちんぷんかんかんって言うんじゃなかったか?」

真由美の相方をやった男が、にやにや笑いながら話に割り込む。
「いやいや、カフンからクダがでるってのは、俺にはわかったぜ?」
「お前か。あれ良く判ったよな」
「へへへ、俺は結構頭いいからな。あいつの言ってる事、他にもちっとは判ったからな?」
「他にはどんなのが判った?」
「えーと、ひし、とか、らし、とかあるんだっけ?」
「らしってカレー屋で飲めるやつか?」
「おでんに付ける奴じゃねえ?」

残念ながらその場には突っ込み役が不在だった。
真由美も泣いていてこんな会話など聞いていない。聞いていても突っ込んではくれなかったろうが。

「最初はいい子にしてて、見世物みたいに見てようってのは確かに面白かったけどよ」
「ああ、こいつ後でヒイヒイ言わせるって思いながら見てると、堪んなかったな」
泣きじゃくる真由美を指さし、一人が言う。

「でも、いつ襲えばいいか困っちまったんだよな」
「そこで俺のカフンカンが生きてくるんだな」
相方をやった男が、また誇らしげに言う。

「まったくだ。お前のおかげで丁度きっかけができたわ」
「急にちんこを出されて、泣きそうになってるのが堪んなかったわ」
「お前、堪んないことばっかだよな」
「上手い事行ってよかったよな。やっぱり時々は女を襲わないと生きてる気がしないわ」
「嘘つけ、時々じゃないだろお前」
「そんであれ、どうすんだ?」
男の一人が真由美を指さした。

「どうしようかな。このまま帰したら後始末が面倒だな」
「このまま教室で飼うか? そんくらいなら俺の親父が揉み消せると思うんだ」
「いいな、それ。だったら毎日遊んでやれるな」
「カフンカンを毎日入れられたらあいつも喜ぶよな?」
「首輪を繋げば逃げられないだろうけど、餌係は誰がやるんだ?」
「ああ、僕がやろうか?」
真由美が最初、教師だと勘違いした優男が手を上げる。
彼もきっちり輪姦に参加したので、今はズボンを履いていない。

「そうか? できるなら頼むわ」
「まかせとけ」
そう言って彼は真由美の方に歩いていく。それを見送りながら別の男が言った。
「でもさ、飼ってたら井上が毎日へばりついてそうな気がしないか?」
「ああ、井上か・・・あの性欲の権化なら、放っておかんだろうなあ」
「あれ、そういや井上、今日はどうしたんだ?」
「そう言えばいないぞ。途中で井上が乱入してたら台無しだったから、丁度良かったんだが」
「下手したら逃げられたかもしれんな。追いかけっこになったら勝てん」
「いや、さすがにあのガキに追いつけないなんてないだろ」
「違うって、井上がガキ抱えて逃げたら追いつけないと思うんだが」
「そっちかよ。まあ確かに」
「それでなんで井上がいない?」
「あれがいると台無しだからどうにかしようって話をしてたが・・・結局誰がどうにかしたんだ?」

そこに、少し離れた場所から問いかけが飛んだ。
「ん、井上君がどうしたって?」
「いないって・・・なんだ、もう続きか?」
あの優男が、さっそく少女にペニスを咥えさせている。
抵抗する気力のない真由美は、泣きながらも大人しくそれを舐めていた。
「餌だよ。いっぱい飲ませないと」
「それは餌じゃねーだろ。普通のもん食わせろよ」
「さすがに僕一人じゃそんなに出せないさ。それで井上君がなに?」
「いないから、どうしたのかなと思ってさ」
「ああ、けさ早くに交換学習会の事を聞いてさ、張り切って出てったけど?」
「じゃあ、朝はいたのか?」

優男が頷く。
「うん。今日は中学生が来るけどみんなが襲うまで待てと言ったんだ。そしたらそれは何かって聞くから、交換学習会に割り込んでこっちに来させる様にしたんだって説明したのさ」
「・・・まさかあいつ、相手の中学校に行ったのか?」
「かもねえ。ああ真由美ちゃん、今のとこを繰り返しなめて?」
「さすがにあいつが交換学習会なんて無理があるだろ。そろそろ追い返されて戻る頃かね?」

 * * *

『目標は14号線を南下中です。引き続き追跡』
『狙撃隊を次目標に移動開始しました』
「新しい情報です。人質が一人、目標から離れました。現在確保中」
『人質確保しました! 救護班を回してください!』
臨時司令部の中で、肉声と無線の音声が錯綜する。

「また一人か。ここまでは何とかなったが・・・残る人質は3名。難しいな」
「移動中で、それに加えてあんな近くでは狙撃もできませんからね。危険すぎます」
「ああ、一発で仕留めないと人質に危害を加えられるかもしれんな」
「救護班から連絡ありました。被害者の命に別状はないそうですが、重傷で、酷い錯乱状態だそうです」
「無理もあるまい・・・悪夢でしかないだろうからな、あれは」

道路が封鎖された街中で、パトカーが遠巻きに目標を包囲しようとする。
だがその対象はビルの壁面や木立を積極的に利用して立体的な機動を繰り返し、包囲を次々にすりぬけていく。
もっともその機動の為には、抱え込んでいる獲物が邪魔だ。
ここまで頑張って3人連れてきたが、また一人取り落としてしまう。
追い掛け回されているので、拾いにいく事もできない。

「やりました! 人質をまた一人確保。現在救護班が向かっています」
「くそっ、そうは言ってもあいつの取りこぼしたのを拾ってるだけじゃないか」
「落ち着け。こちらが追いつめているからこそ、向こうも回収できないのだ。包囲を続ける事は無駄ではない」
「・・・はっ。申し訳ありません、少し取り乱してしまいました」
「救護班から連絡ありました。状態はこれまでの犠牲者とだいたい同じで、命には別条はありません」
「命に別状はない・・・か。だが、惨い話だ」
彼は事件現場を先に見ていた。そこでも死者は出ていなかったが、犠牲者は誰もかれも酷い状態だった。
下手をすれば一生の障害が残るほどの傷を負わされていたのだ。

『目標の移動速度が上がっています』
「人質が減ったからな。やはりそうなるか、見失うなよ。しかしなんて化け物だ、あれは」
「既にレンジャー部隊も投入されているのに、いまだに制圧できていませんからね」
『先回りして設置したカメラのうち、3Bの正面に目標が来ました。映像入ります』
「映せ」

机の上のモニターに目標の姿が映る。それは大きな人型をして、体は黒っぽい物で覆われている。
その左腕には人質を一人抱え込んでいるが、特筆すべきは正面だ。
ほぼ裸に剥かれた少女が正面を向かされ、その股間に太くて禍々しい何かが深々と刺さっている。
つまりその少女は、股間をそれに縫いとめられ、この怪物に貼り付けられているのだ。
「くっ・・・」
時々横から撮影した映像は入っていたので、おおよその状態は既に判っていた。
それでも、こうやって正面から見せられると、焦燥と怒りが湧いてくる。
あの少女の今の苦痛と体に掛かる負荷はどれだけ酷い物だろうかと。

最初の事件現場である中学校の教室でも、そのクラスの女生徒全員がすべて暴行された後だった。
あり得ないほどの凶器で、幼い性器を突き破られた生徒の中には、危篤状態に陥っている者すらいる。
そしてその凶行の現場から、あの怪物は実に7人の少女を連れ去っていた。
うち5人は道中で落としてしまったが、いずれも教室に残された少女たちと同じ目に遭わされた後だ。

「うっ!?」
カメラの至近距離で、怪物が正面の少女を持ち上げ、抜いた。
凶器から解放された少女の股間から鮮血がまき散らされる。
そして気絶した少女をその場に転がすと、今度は左腕に抱えていた少女を掲げ上げ、一気に降ろす。
股間を貫かれて、それまで意識不明だったらしい少女が目を見開き、絶叫した。
声は中継されていないが、悲鳴が聞こえてきそうな一幕だ。
そのまま怪物が少女の体を上下に揺さぶり、凶器に血が伝わり落ちて行く。その直後にカメラが沈黙した。

「あいつ・・・生かして帰すなっ!」
暗転した画面を見ながら、彼は思わず殺意全開で叫んだ。
「落ち着いてください。この先に連続的な立体の機動に使える建物は、もうありません。油断さえしなければ確実に包囲可能です」
「・・・すまん。私も少し取り乱した。包囲作戦は続行だ。それと、今解放された人質はその場に残される可能性が高い。救護班は待機しておけ」
「新しい情報が入りました!」
「何だ? 人質確保はまだだろう?」
「対象について正体が判明しました」
「なんだと? 一体どこの動物園から逃げた? それともどこかの研究所か?」
「対象の進路上にある高校の生徒です」
「・・・・・・は?」

固まった上司に、部下が報告を続ける。
「高校生です。名前は井上蹴(しゅう)。中学校の校門で、交換学習会で来たと称して侵入しようとしたと、入院中の守衛から証言が得られました」
「・・・アレが・・・人間?」
「写真も一致しました。確かに当人です。そして本日、中学校からも高校に女生徒が一人向かっています。交換学習会自体は本当の様です」
「人間だと・・・?」
「お気持ちは判りますが人間です。あの黒いのはどうやら重ね着した制服のようですね。狙撃できなかったのは結果的には幸いでしょうか」
「・・・どこが幸いだ。犠牲者が出ているのには変わらん。つまりあいつは所属高校に逃げている所か? 帰って行く所か?」
「両方でしょうか?」
「まあどっちもでいい。生きたままの制圧に切り替える。人間なら麻酔弾が効くはずだ」
「少し不味い情報もあります。この人物の父親が政府高官なので、干渉してくる可能性が有ります」
「はん、これだけ騒ぎを起こしておいてか? 干渉してくる前に取り返しがつかない所まで情報公開してやるまでさ。さすがに一時間そこらではどうにもできまい?」
「あともう1つあります。目標は我々より先に高校に到着すると思われますが、先ほどの話だと女子中学生もそこにいるはずです。遭遇してしまうと犠牲者が一人増えます」
「そいつはまずいな・・・指示を撤回する。目標の生存より制圧を優先だ。もし麻酔が効かないなら射殺しても構わん。そしてその女子中学生の身柄確保を最重要目標に追加だ。判ったか?」
「了解!」
「了解!」

 * * *

「ほら、おれのも咥えな」
「次は俺な、ああ、手も使えよ」
すっかり無抵抗になった真奈美を、数人の男子生徒が取り囲み、嬲っている。
先に行為を済ませた優男が、そのそばで顔を上げてつぶやいた。
「さっきからサイレンがやかましいね?」
「そうか?」
「何か、だんだんこっちに近づいてない?」
「気のせいだろ。おい尻上げさせろ、後ろから突っ込むぞ」
「こんなどろどろで血まみれなトコによく突っ込む気になるなあ」
「とか言いながら俺の後ろに並ぶんじゃねえよ」

<終わってないが終わる>
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何と子供作ったの井上君のお父さん。