『魔法少女ルーミィ』

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夜の大都会。
黒い空の下、窓に光を灯すビルが立ち並び、電飾付きの看板は、闇を光で塗りつぶす。
そんな街の一角で、密かに激しい戦いが繰り広げられていた。

薄暗い路地裏で、棘の生えた竜の形状をした赤い光が2本、続けて宙を飛んでいく。
その禍々しい光の進路上には1人の少女がいた。
ピンク色を基調とした布で作られ、フリルが多めに配されている可愛らしい衣装。
ふわりと膨らんだスカートに大きなリボンが付けられ、花をあしらった髪飾りも付けている。

場違いと言えば場違いなその少女は、手に持っていた、星型とハート型の装飾物が取り付けられた短い杖で、くるっと輪を描いた。
杖の軌道に沿って青い光の輪が浮かび、赤い竜の1つはそれで弾き返される。
だが青い光はそれで砕けてしまい、2つ目の赤い竜が少女に直撃しかける。

彼女は咄嗟に竜を遮るように、杖をかざした。
ばしっ!
「あうっ!」
光が数本に割れて、消える。その接触の衝撃で少女も路上に転倒した。

「ルーミィ! 大丈夫!?」
少女に、猫くらいの大きさの四本足のシルエットが駆け寄りながら声を掛ける。
白い体毛の、犬か猫か良く判らない動物だ。
喋っている時点で、どのみち普通の犬や猫ではないのだが。

「だいじょうぶっ!」
ルーミィと呼ばれた少女が急いで起き上がった。
大丈夫と言いつつ、今の攻撃を受けて、杖を持っていた右手の袖が破けてしまい、中の上膊部が見えている。
良く見ると、衣装は既にあちこちが破け、部分的に焦げ目すらついていた。

だが衣装よりも、ルーミィはたった今、自分の身を守った杖に目を奪われた。
表情に動揺が見える。
杖に付いていた星の装飾が2つに割れていた。本体にも亀裂が入っている。
白い動物も同じく杖を注視し、思わず声を漏らす。
「まさか・・・魔具が・・・」
魔具とは魔法を使うための道具であり、少女の杖がそうだった。
その、命綱ともいえる道具に損傷を受けたという事実に、さすがに動揺を隠せない。

この戦いは少女の初陣ではない。彼女は既に数多くの戦いを、パートナーの白い動物と共に経験していた。
容易い戦いばかりではなかった。
劣悪な状況での戦いもあり、からめ手で一筋縄でいかない相手も居た。
特に最近の相手は、全体的に強くなってはいた。
しかし、正面から押し負けたのは、今回が初めてだ。

「そろそろ限界っぽいねえ?」
路地裏の向こう側、彼女と対峙する位置に居た複数の人影のうち1つが、言葉と共に前に出た。
大人の女性で、恰好は少女と全く方向性が異なっている。
簡単に言えば淫靡で淫猥。性的な要素をこれでもかと強調した格好だ。
真っ赤な革の様な素材で手足の末端部と胴の一部を包み、あとは網タイツとピンヒールを履いているだけで、ほとんど裸。
宝石付きの赤いチョーカーを首に巻き、頭に金属製の、これも赤い、角を模した装飾を乗せていた。
ほぼ赤で統一されたわずかばかりの遮蔽物で覆った所以外は、美しいくびれを持つ豊満な身体はほぼ全てが露わになっている。
その体にはごく細い鎖があちこちまとわりついていた。
豊かで張りのあるむき出しの乳房を下から鎖が支え、更に乳首のピアスにも鎖が繋がり、へそのピアスと繋がっている。
肩や腕、足腰にも鎖が緩く巻かれていた。

彼女の後ろにはその配下の若い男たちが、少し距離を開けて付き従っていた。
「降参しちゃどうだい? そうすれば命までは取らないよ?」
左手に持ったムチを軽く振りながら、女性が嘲笑を浮かべ、更に一歩を踏み出す。
裸の股間から、ちゃらっとかすかに鎖の音がした。そこに先端に宝石の付いた細い鎖が吊り下がっている。
鎖の付け根は正面から見えないが、位置的には性器にピアスが付いているのだろう。

格好からしてある意味只者ではないのだが、実際に只者ではない。
最近の配下のふがいなさに業を煮やし、幹部クラスのこの女性が今回は直接乗り出してきたのだ。
装飾を施された身体を誇示するように、女性が腰に手を当て、軽く反り返って高笑いした。
「もっとも、相応の扱いは覚悟してもらうけどね? あははははは・・・」

相対する女性に押されるように、ルーミィが杖を構えたまま、じりっと後ずさった。
白い動物が小声で少女にささやく。
「逃げる事を考えないと。レッドレディに正面から対抗するのは現状じゃ無理だ」
「うん・・・でも」
「簡単に逃がす気はなさそうだね」
白い動物が背後の路地をちらっと見て、言った。
人影が駆け寄ってきていた。全部で3人ほどで、これも女性の手下だ。
手下達は、体格はバラバラの若い男だ。白い半袖のシャツと黒いズボンという恰好だけは共通している。

「どうだった?」
女性が少女越しに問いかけ、手下が答える。
「駄目でした。薬は全部焼かれています」
「ふん・・・これじゃあ、優しく済ませてあげる、なんて訳にはいかないねえ」

ルーミィが気丈に言い返す。
「あんな物を、町に持ってくるなんて間違ってるよ!」
「あら、どうして? みーんな気持ちよくなっちゃう、幸せなお薬よ? みんなが幸せになっちゃうの、嫌なのお?」
「そんなの幸せでもなんでもないじゃない!」
「ま、そうね。何もわからなくなっちゃうだけだものねえ。でもあたしにはどっちでもいいのよ、そんなの」
女が左手のムチを振り上げた。
「それよりもまず、邪魔なあんたを片付けなきゃねえ?」

不穏な気配を察し、手下の男たちが後退して、特にルーミィから距離を開ける。
少女は先手を取った。短く呪文を唱え、杖をバトンの様にくるくる回してから、女に向けて勢いよく突き出す。
白く輝く矢が杖から飛び出した。
女がムチを振り下ろし、赤い竜が同時に3匹、ムチから湧いて少女に向かって飛ぶ。

ぱっしいん!
2人の中間点で双方が放った光が衝突し、赤い竜の一匹と、白い矢が相打ちになって砕けた。
残った赤い竜達が、少女を襲う。
ばきっ!
「うぐっ!」
何かの破壊音とともに少女が数メートル、弾き飛ばされた。
どさっ、ごろごろごろ。
身体が路面に落ち、勢いでそのまま数回転がる。

「ルーミィ!」
白い動物が叫び、倒れた少女に駆け寄った。
「・・・く・・・う」
さすがに今回のダメージは大きかったのか、少女はすぐには起き上がれない。
衣装がひどく破れ、スカートが裂けて、片側の肩もむき出しになっていた。
だが目立った怪我はない。

女が少し呆れたように言った。
「案外しぶといわねえ」
「う・・・う」
どうにか少女は上体を起こす。白い動物が、かすれた声で言った。
「魔具が・・・」
「え?」
ルーミィは手元の杖を見た。
それは真っ二つに折れて上半分が失せ、ハート型の装飾が粉々に砕け散っていた。
離れた路上に、杖の上半分だったものの残骸が転がっている。

じゃりっ。
杖の破片を女がピンヒールで踏みにじり、勝ち誇る。
「でも、もう次はなさそうだね」
「・・・っ!」
ルーミィが折れた杖を手に立ち上がった。
その表情はまだ、諦めていない。

だが突然、白い動物が少女の背後に向け、脱兎のごとく逃げ出す。
「え? ニニス!?」
少女があっけにとられて振り返り、相方の名を叫んだ。
ニニスと呼ばれたその動物は、迷いなく一直線に駆けていく。
一番近い男が、その動物を取り押さえようと動いた。

少女の表情が突然険しい物になると、折れた杖を握りしめ、小さく叫んだ。
「フラス・ジン!」
そして杖を振る。その刹那、周囲に眩い閃光がいくつも沸き起こった。

「わっ」
「なんだ!?」
「ええい、逃がすんじゃないよ!」
最後の苛立った叫びは、赤い衣装の女のものだ。

次の瞬間、ルーミィと男の一人がぶつかる。
男がそうしたのではない。少女が小動物を追おうとした男を遮ったのだ。
その結果、男はそれ以上動けなかったが、ルーミィもその場に転倒してしまう。

「主人を置いて逃げるとは、頼りになるパートナーだねえ」
女が可笑しそうに言った。既に白い動物の姿はどこにも見当たらない。
答えない少女に、女が更に言葉を重ねる。
「裏切られたのにそれを助けるあんたも、大概だけどね。それともあれが逃げられれば、逆襲のチャンスがあるとでも思ったのかい?」
「どうします。必要なら本部に連絡を取って、人手を使ってあれを探させますか?」
男の一人が携帯電話を手に、女に聞いた。
「ほっときゃいいさ。あれは単体だと、ほとんど何もできゃしないんだ」
「詳しいですね」
「あたしにこの力をくれた奴が、そのへんを色々教えてくれてね」

どうにか立ち上がったルーミィが、つぶやく。
「やっぱり・・・そうか・・・」
「ん?」
「もう手遅れかもしれないけど・・・その黒幕とは手を切った方がいいよ」
女の目を見ながら、ルーミィは真剣な口調で言った。
「はあ? なに馬鹿な事ほざいてるんだい?」
「魔力を与えられた人間は、その力に耐えられず、いずれ崩壊してしまう」
「どの口でそんな事言ってんだ。あんたの使ってるのだって魔法だろう?」
「魔法少女には、そうならないための安全弁がいくつも掛かってる。でもあなたにそんな対策が施されている様に見えない。ただ単純に魔力を与えられただけじゃないの?」
「う・・・?」
「このままだといずれ、あなたはヒトでいられなくなる。そうなる事くらい知ってるはずなのに、無造作にあなたに力を与えたのなら、その黒幕はあなたを、使い捨てのコマにしてるだけ」
「だ・・・」
女がたじろいだように見えた。
今の少女の言葉の中に、思い当たる部分があったのだろう。
だがそれで今更、止まれる訳もなかった。

「・・・黙れぇ!」
女が鞭を振り、赤い竜が少女に向かって飛ぶ。
少女は折れた杖を構え、呪文を口にし、最後の抵抗を試みた。
ばしゅっ!!
竜が直撃し、ルーミィは衣装の破片をまき散らしながら、吹っ飛んだ。
道路にごろごろと数回転がって、やっと止まる。
その衣装は胸から腰に掛けてがずたずたに裂け、中のまだ幼い身体が覗いてしまっていた。
半裸になるほどの惨状の割には、身体にほとんど傷がない。

ぱしゃっ。
すぐ近くに落ちていた、彼女の手から落ちた杖が、わずかな光を放ち、粉々に砕けた。
ちりちり・・・と金属箔がこすれるような音がして、倒れたまま動かなくなった少女の身体の周りに、小さな光がいくつも湧き上がる。
彼女のぼろぼろの衣装も一緒に光り始め、全体が一瞬明るく覆われてから、全ての輝きがすうっと消えた。
ルーミィの衣装は消え去り、下着だけの姿になっている。

「ふん、変身が解けたか。それならもう、たいした事はできないだろうけど・・・」
女が合図すると、男の一人が灰色の環状の器具を持ってきた。
意識のないルーミィの手足に、それを嵌めていく。
手枷と足枷を付けられたルーミィを見下ろし、女は上機嫌で言った。
「これで完全に無力だ。さ、本部に運ぶよ。いい土産ができた」


ややあって。
ルーミィの髪の毛が掴まれ、揺さぶられる。
「・・・う・・・んっ」
少女はうっすら目を開ける。まだぼんやりしており、現状を把握できていない様だ。
「いいざまだね、魔法少女様?」
「・・・れっど・・・れでぃ・・・?」
声を掛けた女がいつも自称する名前を、ルーミィは口にする。
その女の本来の名前を少女達は知らなかった。

「ふふふ、あたしの巣にようこそ」
そう言って嘲笑を浮かべるレッドレディと、その背後に控える、嫌な笑いを浮かべる大勢の男たちを見上げながら、ルーミィは記憶を辿る。
完全な敗北だ。よもや魔具を破壊されるとまでは思わなかった。
それで、やむを得ず・・・

ああ、そうか。そして捕まってしまったのか。
何故生きているのだろう。あのまま殺されると思っていた。
「うっ・・・?」
ルーミィは身じろぎし、痛みに顔をしかめた。

まずは今の状況を把握しようとする。
ここはそんなに広くない密室だ。小規模な会議室くらいか。
部屋の壁は浴室のようにタイル張りで、床にもざらざらしたタイルが貼られている。
自分はその冷たい床に座らされていた。正確には座っているとも言えない姿勢だ。
今の自分には手足に灰色の枷がはめられている。
そして天井からワイヤーで、左足と右手の枷が吊り上げられていた。
半ば宙吊りみたいな状態で、おしりが床に着いているだけだ。
それだけでろくに動けないだろうが、右足と左手もワイヤーでそれぞれ逆方向に引っ張られている。
これでは姿勢すら変えられない。
駄目押しで、この灰色の枷には魔法を封じる機能がある。
今の状態ではもともと大した魔法は使えないが、これでは完全に無力だ。

そして、ほぼ何も着ていない状態だった。
魔法少女の状態でダメージを受け過ぎたので、衣服があらかた無くなっている事は予想できていた。
あの状態での衣装は、魔法少女の戦闘服であり、鎧の機能を持っている。
少々の攻撃なら弾くし、もし致命傷に近い直撃を受けても、衣装がダメージを肩代わりする。
難点としては、衣装は無から作るのではなく、変身時に着ていた服を再構成することだ。

大きなダメージを受けて衣装が破損すれば、変身を解いた時、元の服にも欠損が起きる。
だがこの状態はそれとは違う。どんなに破損しても下着は残るのに、今はパンツを履いていない。
スポーツブラは残っている。つまり下は人為的に脱がされたのだ。

ワイヤーに引かれて強引に開脚させられている少女は、股間が完全に剥きだしになっていた。
そこは酷い事になっていた。痛かったのも道理だ。
クリップ状の器具が2つ、彼女の性器の左右を周辺の柔肉ごとがっちり挟んでいた。
両側に引っ張られて、裂けんばかりにこじ開けられてた性器は桜色の中身を晒している。
彼女からは死角になって見えないが、肛門も同じ目に遭っているのが痛みで判った。

恥辱的な有様を隠す事もできない少女に、レッドレディがにこやかに、しかし悪意の籠った笑顔で言った。
「あっさり殺してあげても良かったんだけど、あんたには色々邪魔されてきたからね。その分は身体で弁償してもらうよ」
「・・・」
黙って痛みを堪えるルーミィに、レッドレディがかがみこんで言葉を続けた。
「なーに、簡単なお仕事さ。あんたは何もしなくていいから楽なもんさ」
何やら棒状の物を持った手を突きだす。黒色のマジックペンだった。
ルーミィの胸の辺りに、それで何かを書きこんでから立ち上がる。
少女を見下ろしながら、レッドレディは堪えきれなくなったように笑い出した。
「・・・ふ、ふ、ふふ、はは、あっはっはっはっは、いいざまだねえ・・・」

ひとしきり笑うと、レッドレディは胸を反らし、楽しげに宣言する。
「そうさ、このトイレで、あんたはあたしの部下たちに便器として使われるんだよ。精液専門のね?」
彼女の後ろから、男たちからも嘲笑じみた笑いが漏れた。

なるほど、言われてみればここはトイレなのだと判る。
そして無力化されたルーミィは、魔法を封じられれば、あとは見た目どおりの非力な少女に過ぎない。
男たちへの生贄としてなら利用価値があると判断され、生かしたままここに連れ込まれたのだ。
これまで活動を邪魔されたレッドレディの憂さ晴らしの意味もあるのだろうが。

「あんたはここで死ぬまで嬲られる。それが仕事だよ。どうだい、楽しいだろ?」
自分こそが楽しそうにレッドレディが宣言する。
自分の体に何を書かれたのかは、ルーミィからは良く見えず、向きも逆だ。
だが要するにレッドレディが宣言しているような内容なのだろう。

ここでレッドレディがルーミィに、ぐっと顔を近づけて、ささやく。
「ところでさ、こーんな風におっぴろげたら、なんと、あんた処女じゃないの」
「・・・」
「あたしとしては、見ず知らずの男に処女を奪われるなんて、そんな可哀そうな事はできないねえ?」
「・・・え?」
ルーミィは怪訝そうに聞き返す。レッドレディの言動は今の状況には似つかわしくない。訳が判らなかった。

「だ・か・ら・ね?」
女は手に持っていた太い油性マジックペンを、再度ルーミィに見せつける。
「これを・・・こうさ!」
ざくっ!
「ふぎゃっ!!」
前置きもなく膣にマジックペンを突き込まれて、ルーミィが悲鳴を上げた。
「男たちに奪われる前に、顔なじみのあたしが処女を奪ってあげようじゃないか。優しいだろう?」
駄目押しにぐりぐりとマジックペンをねじ込みながら、女が嘲笑した。
「や、あ、いたっ」
「良かったねえ、嬉しいだろ? こんなつまらない、生き物ですらない代物に処女を奪われるなんてさ?」
「ひ、ひっつ、あぐっ」
鮮血にまみれたマジックペンをこねくり回され、乱暴に出し入れされ、ルーミィが悲鳴混じりの喘ぎを上げる。

少女の膣を散々いたぶってから、女は刺さったままのペンから手を離し、立ち上がった。
「これでもう思い残すことはないだろ? なら、本番の始まりだよ」
「く・・・う・・・」
「ためしに可愛い声で媚びてみたらどうだい? あたしの手下が、ちょっとは手加減してくれるかもしれないよ?」
「う・・・あなた・・・は・・・」
激痛を堪えながら、ルーミィはレッドレディを、何か言いたげにを見上げる。

「ふふん、なんだい、命乞いかい?」
「・・・あなたは・・・そんなに元気なら・・・間に合うかもしれない・・・」
「は?」
「黒幕と・・・手を切って・・・まだ・・・助かるかも・・・」

がずっ!
「うぎゃあっ!」
マジックペンを踏みつけられて、ルーミィが絶叫し、のけぞった。
「こいつ・・・ああもう、腹立つねえ・・・」
レッドレディはそのまま、ぐりぐりぐりと性器ごと踏みにじる。
「あぐ、ひ、うぎっ、あ」
「もういい!」
散々痛めつけてからやっと足を離し、女は振り返って部屋の出口に向かう。
そして、待ち構えていた男たちに言い放った。
「もういいよ。やりたい様にやりな。いっそ殺しても・・・ああ、全員が満足するまでは殺しちゃいけないか。その程度は加減するんだね。いいかい?」
「ははっ!」
「了解です!」
「判りました!」
男たちが口々に答える。

扉を開けたレッドレディが、振り返って思いついたように言った。
「そうだ。一回ヤるたびにそいつの身体に回数を書き込んでおやり。正の字なんかどうだい? 皮肉でいいだろ?」
「ああ、いいですな」
「へへ、書く所が残らないほどやりまくってやりますぜ」
「じゃ、後はまかせたよ」
レッドレディが今度こそ去り、そしてルーミィの元に男たちが殺到する。

ずりゅっ!
「あ、あうっ」
血まみれのマジックペンが抜かれた。
すぐにそこに、もっと太くて熱い物が突っ込まれる。
「ぐひっ・・・い、いた・・・あっ」
同時に複数の男たちが彼女の身体を蹂躙し始める。さすがに一度に囲める人数には限りがあるので、かなり順番待ちがいる状態だ。

「やめてっ・・・あ・・・や・・・や・・・」
群れた男達の中から、ルーミィのかすかな悲鳴が聞こえる。
未成熟な性器を凶暴な男根に貫かれ、肛門も犯され、口でも銜えさせられる。
ルーミィは抵抗できない。したくても身体の自由を奪われているし、魔法も封じられているのだ。
もし手枷と足枷がなかったとしても、ほとんど状況は変わらないだろうが。
レッドレディが把握している通り、魔具もなく、パートナーもいない今の状態では、彼女単体の能力はたかが知れているのだ。
は口の中に突っ込まれた物を噛む程度なら出来たかもしれないが、この状況下ではそれは逆転のきっかけではなく、単なる虐殺のきっかけになるだけだ。

部屋の中で、よってたかっての蹂躙が続く。
むせ返るような匂いの中、少女の苦悶の声が途切れ途切れに漏れる。
「う、う・・・ふぐぅっ・・・」
既に2桁の回数で膣内に射精された。肛門にも、口にも。
男たちは常人よりもずっとタフだった。レッドレディほどではないが、何らかの支援を受けているのだろう。
ひたすら続く陵辱の中で、ルーミィは死を覚悟した。
彼女の子供の身体を、複数の大人が休みなく、嬲り者にし続けているのだ。
いずれ消耗しつくすか、どこかが壊れる。
もう既に体中が痛く、息も苦しい。
このまま強姦され続けるだけで、命が尽きてしまいそうだ。

レッドレディはルーミィの生存に意義を感じていない。そして今のルーミィにも、何ら秘策はない。
この場から逃れるシナリオはもうない。今日は死ななくても、やがて終わりがくるだろう。

彼女のおなかに男が血まみれのマジックを当てた。
「ええと、これで何回・・・まあいいや」
きゅ。
幾つ目になるか判らない正の字の棒が、新たに書き足される。
太腿にも、お尻にも書き込みが重なっている。
正しい、の正。
確かに、この状況では皮肉でしかない。

別の男が笑いながら言った。
「次いくぜ。まだまだ終わらねえからな?」
「・・・くふぅっ・・・あっ・・・」
もはや力の入らない身体で、腸と膣を同時に抉られる激痛に泣き叫びながら、ルーミィは祈っていた。
神など信じていないが、それでも祈らずにはいられなかった。
あの身体を張って逃がした大切なパートナーが、無事、逃げ延びてくれますように。
せめて、それだけでも。
それだけでも適いますように・・・。

 * * *

彼女にとって永遠とも思える責め苦の時間だったが、しかし終わった。正確には単なる一時休止に過ぎないが。
実際の経過時間はさほどではない。まだ夜は終わっていなかった。
ぼろぼろになったルーミィは、当然のようにその部屋に残されていた。
拘束はそのまま、さんざん痛めつけられた体を倒れさせることすら出来ず、ただぐったりと弛緩させている。
顔には殴られたと思しき痣が浮かび、乾きかけた精液まみれの体はあざだらけだ。
ブラはとうに破られて残っていない。
マジックのいたずら書きは、さほど増えていなかった。
回数的にまったく合わない。いちいち記録するのが途中で面倒になったのだろう。

最後の男が行為後に嗜虐心を起こしたのか、腫れ上がった性器の中心にマジックペンが深々と刺さっていた。
それは蓋にもならず、血と精液の混じった粘液が脇から溢れ出ている。
そんな悲惨な状態ではあったが、少女はまだ生きていた。胸はかすかに動き、浅い呼吸を続けている。
周辺は暴虐の痕跡と言える、血と体液とわずかばかりの布の断片が散らばっていた。
男たちはいない。部屋の周囲に監視はついているだろうが、このトイレ内には誰もいない。
もちろん、だからと言ってルーミィが逃げられる訳でもないのだが。

「ぐ」
ごく小さく短いうめき声が、かすかに聞こえた。ルーミィではない。室外からだ。
扉の開く音がし、忍ばせた足音が彼女に近づく。
「うわぁ・・・」
悲痛そうな声が聞こえた。押し殺した小声だったが。
何かをごそごそと探る音の後、パチン!と固い音が響き、ルーミィの左足を吊り上げていたワイヤーが切れた。
無抵抗に落ちかけた足を、誰かの手が支え、そっと床に降ろし直す。

ここでやっとルーミィは目を開けた。目の前の人物に弱々しく問いかける。
「・・・なんで・・・ここに・・・」
「なんでじゃないよ! どういうこと?」
囚われの少女と同じ顔の少女が、ルーミィに少し厳しい表情で言った。あくまで小声で。
「・・・レッドレディは、ルーミィの正体を知らない・・・ここで僕が死ねば・・・追及は止まるはず」
「やっぱり、代わりに死ぬつもりだったんだね? 駄目だからね?」
他のワイヤーも、持っていたバックから取り出した道具で切りながら、捕まっていなかった方のルーミィがにべもなく提案を拒絶する。

「でも・・・」
「それよりどういう事?」
「な、なに・・・が・・・?」
「気が付いたら私がなんでかニニスに変身して勝手に走らされてた。まあそれは、前にも変身した事はあるからまだいいとして、ニニスが私そっくりに変身できたのはなんで? そんな大技ないはずだよね?」
別の道具で灰色の枷を切り裂きながら、どうやら本物らしいルーミィが相手に尋ねる。

ルーミィはニニスの支援により魔法少女になり、その状態でなら魔法を使える。
かなりの大技も使えはするものの、無制限にではない。ニニスによって制限を受けている。
過大な魔法の使用はルーミィの体を犯すのだ。それを続ければいずれ破滅に至る。
一方、ニニスは最初から魔法を使えるが、ルーミィに比べると小規模で地味な物だけだ。そのたため支援に回る事が多い。
ニニスが他の姿に変身した事など、ルーミィが知る限り今回が初めてだった。

囚われていた方のルーミィが、ゆっくり答える。
「・・・これは変身じゃないから」
「ほえ?」
「僕の・・・今の僕の・・・本物の体なんだ」
「えええ? ニニスって実は人間の女の子だったの?」
「ううん、元はそうじゃ・・・ないけど・・・」
説明するのもつらそうなニニスの様子に、ややこしい話は後だと判断したルーミィは切り上げを宣言する。
「聞いといてなんだけどさ、後にしようか。それより逃げなきゃ」
会話しながらも、ルーミィの手は止まらない。
もう一人のルーミィ、つまり実際にはニニスだった少女の手足の枷を次々と壊していく。
伊達にこれまで色々と戦ってきたわけではない。
この手の道具への対応は初めてではないのだ。

しかし、初めての事もある。
ぎゅぼっ。
「うわあ・・・痛そう・・・」
血まみれのマジックペンを放り出し、泣きそうな声でルーミィがささやく。
それは頑張って引っこ抜いたものの、粘膜に食い込んでいるクリップをどうしようかと悩むルーミィに、ニニスが言った。
「そこはそれでいいよ・・・それより、逃げるのなら早く動かないと・・・」
「う、うん」
「でも、もし・・・僕が足手まといになったら、見捨てていいから」
「そういうのやめて。どう、立てる?」
「うん・・・うぐぅっ・・・」
ルーミィの肩を借りてニニスが立ち上がりながら、体中の痛みに顔をゆがめる。
それでもどうにか立ち上がると、性器から体液が逆流して溢れだし、内またを伝い落ちる。
床にぽたぽたと、濁ったしずくが垂れる。その水滴を点々と床に残しながら、2人はトイレを出た。

外では見張りが床に倒れていた。もちろんやったのはルーミィだ。
「よくここまで・・・入れたね・・・」
「一度家に帰って色々持ってきたもの」
ルーミィは魔法少女の格好ではなく普段着だ。そもそもパートナーなしで変身はできないし、魔法も使えない。
だが魔法なしでも使える支援用の道具は、これまでの経験で色々準備してあった。
鍵を開け、姿を隠して潜入し、雑魚を気絶させる程度なら、準備さえ整えればできなくはない。
レッドレディの様な幹部クラスには通用しないにしても。

「僕らが・・・」
廊下の気配を伺いつつ進みながら、ふっとニニスがつぶやく。
「え?」
「君たち魔法少女のパートナーになるのは、報酬があるからなんだよ」
躊躇いながらニニスは言った。多少回復したのか、もう息が切れてはいない。
「あったの?」
ルーミィがまだ香柳真紀だった頃。
ある日突然ニニスから魔法少女になるよう勧誘された時に、そういう話は出なかった。
「実はあったんだ」
「あ、でも不思議じゃないかな。私には報酬があるって言ったものね」
ニニスがもっと上位の者からの意向を受け、そういった活動をしているくらいは知っていた。
ルーミィに報酬があるのだから、ニニスにだって報酬があってもおかしくはない。

「まずね、僕らの種族は雄しかいない」
「へえ?」
廊下の角に行き着くと、そっとその先を探ってから、2人は歩みを再開する。
「それでね、魔法を使える素質のある少女を探して魔法少女になってもらって、そのパートナーになれば、僕らはその魔法少女の体のコピーができるんだ」
「・・・あ、じゃあ今のその体は、私のコピーなの?」
ルーミィは改めて相手の体をまじまじと見たが、裸な上にぼろぼろに痛めつけられているので、疑問とか好奇心以前に、早く治療しなきゃという感想が先に浮かぶ。

ニニスは少し苦笑して、言った。
「そして任務が終わったら僕らは故郷に帰って・・・その女の子になった体で子供を産んで、種族を存続させるんだ」
「そうなんだ・・・へえ・・・」
「ルーミィは嫌じゃない? 自分のコピーを知らない間に作られたり、自分そっくりの女の子が犬や猫みたいな動物を産んじゃうのは」
その問いかけに、ルーミィは首を振る。
「私が直接産まなくちゃ駄目っていうのは困るけど、そうじゃないなら特にはないかな。それよりニニスはどうなの? 本当は乗り気じゃないいとか、子供産むのが嫌だったりとかする?」
「ううん、魔法処女を見つける任務自体は光栄なものだ。そして子供を産めるのって素敵な事だよ。みんなの憧れさ。実はこの任務って競争率高かったんだよ?」
「なら誰も困ってないのよね。だったらいいんじゃない?」
「・・・ぷふっ」
「なんで笑うのよ」
「真紀ちゃんはやっぱり変わってる。君を魔法少女に勧誘する時、肝心の報酬の話をする前に了解しちゃったじゃない。あまりそんな人いないよ?」
「え、だって人を助ける役目って聞いたから」
「・・・この任務に付けたおかげで、真紀ちゃんに会えて良かった」
「ん?」
「なんでもない・・・それより、まずいな、これは」
「え・・・あ、気づかれた!?」

2人の前に、この無力な状態では最も遭遇したくなかった、赤尽くしの淫靡な姿の女が待ち構えていた。
ニニスがつぶやく。
「僕らみたいな存在もいれば、世界を荒らすことに異議を見出す存在もいるからね。彼女はたぶんそいつらの尖兵の力を借りている」
「でもレッドレディってすごく強いよね。ニニスの言うそいつらって、それほど強いって事?」
「いいや、僕らと大差はない。でも彼らは使役する存在の将来を考慮しないから。後先考えず力を引き出された手駒は、短期的には強いんだ」
「それじゃレッドレディって、このままだと破滅するんじゃないの?」
「するよ。当人にもはっきり言った。だけどそれを内心では判っているのに、やめる気はないんだよ」
緊迫した顔で会話する2人に向かい、レッドレディが苛立たしげに言った。
「どういう理屈か知らないけど、まんまと騙されちまったようだねえ?」

レッドレディも逃げ出したパートナーを完全に放置していた訳ではない。
最低限の警戒はしていた。しかしまさかパートナー以外が潜入してくるとは計算外だった。
おかげで後手に回ったが、現状が最悪と言うほどではない。
相手の脅威度は低い。改めて2匹とも潰せばいいだけの話だ。

「次はないよ。今度は丁寧にちゃあんと、息の根を止めてあげるからね?」
レッドレディの宣言に、弱っているニニスを庇うように、ルーミィが前に出る。
もっとも今の彼女には戦闘力はほとんどない。
持ってきた道具でどうにかなってくれる相手でもないだろう。だが大人しくする気もない。
バッグを漁ろうとしたルーミィに、ニニスが後ろから囁きかける。
「ねえ真紀ちゃん。改めて聞くけど、僕を受け入れてくれる?」
「え、なに?」
「さっきの話を聞いても、僕を受け入れてくれる?」
「コピーとかの事? えーと、何か嫌がる要素ってあったっけ?」
「・・・うん、いつもの真紀ちゃんだね」
ニニスがふわりと笑う。
「それで、どうしたの?」
「真紀ちゃんはもう、僕の正体を知ってる。それでも受け入れてくれるなら・・・僕の全てを真紀ちゃんに委ねるよ」
その言葉とともに、ニニスが後ろからルーミィに抱き着く。
「え、ニニス、なに・・・!?」

かっ!!
2人のいた所から、眩い光がほとばしり、屋内を明るく満たす。
「な、なんだい!?」
眩しさでレッドレディが思わず腕を顔にかざす。周辺に集まっていた配下の男たちもだ。
光がすうっとひくと、そこには目を閉じた少女が一人しか残っていない。
一瞬、今の隙に二人のどちらかが逃げたか、と思ったが、妙な事に気が付いた。
相手が、魔法少女の格好をしていたのだ。
先ほどまでは、片や裸で片や普通の服装だったはずなのに。
そして支援する道具も見当たらないのに。

少女がゆっくり、確かめるようにつぶやく。
「真紀ちゃんは魔法を使う高い素質があるけど、人の体は限界が低くて制約を受ける。僕は底なしに耐えられるけど、魔法を使う資質が乏しくて、できる事が少ない。それならさ、真紀ちゃんが僕の身体を自由にできたら?」

じり、とレッドレディが下がる。
何が起きているのか判らないが、この状況に脳内で警鐘が鳴っていた。
だが、そんな物はこの力を得た時に既に感じていた。今さら恐れても始まらないのだ。
「お前たち、手加減はなしだ。殺す気でかかりな!」
檄を飛ばすと、彼女自身も鞭を振り上げながら、赤い竜を何匹も放つ。出し惜しみしている場合ではない。
竜を放った反動で酷い頭痛がするのにも構わず、彼女は一気に距離を詰めていく。

「ニニス、大丈夫だよ。終ったらちゃんと返すから」
少女が目を開けながらつぶやくと、少し戸惑った顔になる。
「そんなの疑ってないって?・・・ふふふっ、それなら、いっしょに行こう!」
笑顔になると、レッドレディをまっすぐ見つめた。何も持っていなかった手が眩く光り、虹色の杖が出現する。
杖を構え、少女はレッドレディに自分から、ためらいもなく無造作に飛び込んでいった。

その日。
町の一角に虹色の巨大な光が立ち上ったのを、多くの人が目撃したと言う。

<話的には広がりそうだがおわる>
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「魔具を破壊するなんて・・・はっ!まさかあの攻撃はマグ・デストトイヤー!?」
「ねえニニス、そのネタって今だと全国で20人くらいしか判らないと思うよ?」
「今ならもうちょっと居るんじゃないかな。でもなんで君は判るのさ、真紀ちゃん」

ところで真紀ちゃんへの本来の報酬は「魔法を自分の事にも使える」でした。
ニニスがお供している期間だけって前提だけど。